お化け屋敷を開催してから次々と起こる心霊現象
第拾捌話 勝手につくテレビ

体験者:業務部Nさん

お化け屋敷「血の糸」の古びた病室を再現したセットの隅に、一台の小さなブラウン管テレビが置かれている。

このテレビ、実は本物の病室で使われていた廃棄予定品を、製作者の大学生スタッフがもらってきたものだ。年月を感じさせる外装に、今では滅多に見なくなった重い筐体。

「どうせなら本当に病室にあった物の方がリアルだろう」
そんな学生たちの軽いノリで持ち込まれた。

当初の計画では、そのテレビが“恐怖演出の目玉”になるはずだった。
体験者が通りかかった瞬間、スタッフが隠し場所からリモコンのスイッチを押す。すると突然――
ザザザァ……
と砂嵐の画面と異様なノイズが一斉に流れ出す、というものだった。

ところが問題が一つ。
このテレビ、あまりにも古すぎて、リモコンが反応しない。
それどころか、手動で電源を押してもなかなかつかない。砂嵐どころか画面すら点灯しないのだ。

結果、テレビは演出に使えないまま現在に至る。
今ではセットの“リアルさを出す小道具”として病室のベッド下に半ば放置されている。

――ここまでは、よくある舞台裏の話だ。

しかし、このテレビにはもうひとつ、“誰も説明できない”問題がある。

誰も触っていないのに、勝手につく。

最初に気づいたのは、お化け担当スタッフのNさんだった。
ある日、彼が一人で道具の整理をしていると、病室の奥から突然、

……パチッ

という、古い家電特有の電源が入る音がした。

ベッド下を覗くと、例のテレビの画面がぼんやりと光り、うっすら白いノイズが走っていた。
しかし、脇にはリモコンもスイッチを押した形跡もない。
そもそも、あれほど頑固で電源すら入らなかったテレビだ。

誰が、どうやって電源を?

Nさんは「絶対に何かいる」と怯えながらスタッフルームに戻ったが、信じてもらえるかどうかはわからない。
ただ、その後も片付けの最中や閉館後――
ほぼ同じタイミングで、テレビが突然つく現象は何度か起きている。

もちろん、今もそのテレビはベッドの下に置かれたままだ。
演出としては機能しない。
だが、“何か”が勝手にスイッチを入れる。

本来ならもう使われることのない、役目を終えた病室のテレビ。
何が映っているのかをご覧になりたい方のご来場をお待ちしています。